寝ても覚めても

 

 

この間、映画『寝ても覚めても』を観てきました。

 


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主演:東出昌大

監督:濱口竜介

原作:柴崎友香

 

 

東出昌大一人二役を演じた作品。

 

朝子(唐田えりか)が同じ顔を持つ二人の男・麦と亮平(東出昌大)に出会い、その間で揺れ動く葛藤を描いた恋愛映画。(なのか?)

 

寝ても覚めても』って、何かに没入してる感じが出ていてタイトルからいいよね。

ネタバレの前に、おすすめの映画だということだけは言っておきたい。

 

 

以下、超超個人的な感想とネタバレです。やたら長いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずこの映画の第一印象。

 

 

監督のこだわりすごい。(語彙力のなさ)

 

 

一つ一つのシーンが、すごいこだわって作られてるなという感じがした。

カット割りとか、どの位置から撮るかとか、けっこう独特というか、アーティスティックなかほりがしました。

 

 

 

特に印象的なシーンは(いっぱいあるけど)、例えば朝子と麦が出会って恋に落ちるシーン。予告編でもちょっと見れるやつ。

 

同じ美術館に入った二人。朝子は鼻歌を歌いながら鑑賞する麦を見つけた瞬間に目で追ってるんだけど、麦は気づかない。普通ならそのまま交わらない二人。「なんか変わった人いたな〜」って朝子が家で思い返すくらい。でも二人は違うんですね。

 

二人は同じタイミングで美術館を出る。途中まで帰路が同じで、階段を登った先で二股に道が別れる。互いに別々の方向に向けて歩き出す。そこで中学生が遊んでいた爆竹が弾けてすごい音が鳴ります。「パンパンパン!!!」同時に振り返る朝子と麦。

 

ここの演出がすごい。

 

朝子と麦は「運命的な出会い」をするというあらすじなんだけど、これ以上の運命的な出会いがあるかってくらいの出会い方。鳥肌立ちました。(笑)

爆竹の音と煙がこの二人の激しい恋の始まりにぴったりなんですよね。

ただロマンチックとか、偶然が重なってとかそういうんじゃなく。まさに二人にふさわしい出会い方。BGMもすごい独特でマッチしてます。かなり印象に残るシーンだったなあと思う。

 

 

他にも色々、印象的なシーンはあるんだけども(亮平が朝子のカフェ?を覗くとことか、マッサージのシーンとか、東北ボランティアのとことか)長くなりそうなので割愛。

 

 

 

そして何よりこの映画…

 

なんか気持ち悪い。(笑)(ほめてます)

 

 

まずね、朝子が初めに恋に落ちる麦ね、そりゃ東出くんがやってるし、独特な雰囲気持ってるし、かっこいいんだけどね、

なんか気持ち悪いんだよね。(笑)

 

なんでこの男がいいの?って朝子の友達・春代ちゃん(伊藤沙莉)がストップかけまくるのも納得の気持ち悪さ。

さらに、朝子が麦の働くクラブでちょっと他の男に絡まれたくらいで即蹴り。いや、お前が呼んだせいだろーが!って突っ込みたくなりました。(笑)原作だと朝子にも暴力を振るうことがあったみたい。ただのダメ男やん!!(笑)

 

でもいるんだよね、ああいう男を好きになっちゃう女の子。

絶対ボロボロになるの分かってるのに、好きになっちゃうんだよね。

 

激烈恋愛中の『二人の世界』って、端から見たらこんなに異質なものなのかと、身につまされました。(笑)

 

 

 

あと、朝子も正直身近にいたら苦手なタイプ。

 

劇中でもあったけど、ふわふわしているように見えて他人の意見なんて真っ向から聞く気ありません、という良く言えば芯がある?まっすぐ?悪く言えばちょっとだけ自己中。

 

唐田えりかさんはすごく透明感があって綺麗なんだけど、この映画ではちょっと自分の世界が強すぎて?変な人という感じが出ていました。メイクも、目の下にガッツリ黒のアイラインが入っていて、ちょっと怖いイメージ。

 

亮平と美術館で会った時のシーン(まだ会って2回目とか)で、亮平の顔ベタベタ触るし。ギョッとした。(笑)

一緒に観た人とも話してたんだけど、一番最後のシーンで亮平と朝子が並んでるんだけど、朝子だけすごく、幽霊っぽいんですよね。なんか怖い感じがする。そのシーン以外でも、けっこう幽霊っぽく感じるところがあった。

 

 

怖いといえば、この映画で一番怖かったシーン。

朝子が亮平と結婚して大阪に行くことになって、一人で引っ越しの準備をしている。突然インターホンが鳴って、扉を開けると、何年も音沙汰がなかった麦が立ってる。朝子はパニックになって扉を閉めるんだけど、外からは麦の声がしてる。

「おーい、あさちゃーん、僕あさちゃんと一緒にいきたい、一緒にいこうよー」(全部同じ音程)

 

いや、めっちゃ怖い!!!

まじで怖い!!!!なんで住所知ってんの??怖い怖い怖い!

 

朝子もパニックになってお皿を落として、床にうずくまって震える。「そうだよね、さすがに今更麦が来たってね、もう亮平のこと大好きなわけだし…なんで住所知ってるの?ってなるよね、怖いよね分かる」って勝手に思っていたら…なんとそうじゃない。(笑)

 

 

朝子「なんで今なん……?」

 

 

なんと朝子…怖がってない。むしろ喜んでる。ここでまさかの、本当の葛藤が始まるんですね、『自分は麦が好きなのか?亮平が好きなのか?やっぱり亮平は麦の身代わりでしかなかったのか?亮平のどこを愛していたのか?』

やっぱり朝子…ふつうじゃねぇ。(笑)でも、もしかしたら現実にもこういうことってよくあるのかも知れないですねー。表出してないだけで。

 

 

 

 

それで、最後のほうでね、朝子は元彼・麦の手を迷いなく取って、5年付き合った現恋人・亮平の目の前から消えるんですね。あとはもう誰の言葉も朝子の耳に入らない。亮平だけでなく、今までの交友関係、持ち物、スマホ、全てを捨てて麦と駆け落ちしようとする。

なのに、そこまでして着いていったのに、中間地点の仙台で突然気づく、「麦は亮平じゃない」ことに。そして麦に別れを告げ、亮平のもとに向かう。

 

 

誰の言葉も聞かない、固い意志を持った朝子だけど、再度亮平のもとに向かう時、東北ボランティアで知り合ったおじいさんにお金を貸してもらったり、大阪時代の友達やそのお母さんに会って背中を押してもらったり、周りにたくさん朝子を支える人がいる。そのことに朝子は気づけたのかなあ。

 

 

亮平は朝子を頑として受け入れようとはしなかったし、「一生信じられへん」と言ったけど、最後はうちに入れてもともと二人の新居になる予定だった窓辺から川を眺める。物件を見に来た時は「きれい」と言って二人で眺めた川を、亮平は「きったない川やなあ」と言いながら横目で見ている。

 

朝子の一番汚いところを見たからこそ、また二人は同じ景色を見られたんじゃないかな。

 

 

 

恋愛において、タブーとされてることは色々ある。浮気とか、不倫とか。

朝子が亮平を捨てて麦のところに行ったことは、絶対に"タブー"な行動。てか最低。(笑)

 

でも、朝子があの時麦と再会して、麦の手を取って行かなければ、きっと朝子は一生自分が本当に好きなのは麦か亮平か分からないままだった。心から、何の迷いもなく亮平を愛することはできなかった。あのまま亮平と結婚して暮らしても、絶対に綻びが生まれてた。だから、あの行動は、"ダメ"だけど、朝子と亮平が一生一緒にいるためには不可欠なものだった。

 

 

私は、朝子はそれを分かってたから麦の手を取ったっていうのもあるんじゃないかと思ってるんですよね。本当に好きなのは麦だ!と思っただけじゃなく。全てを失うことになったとしても、今確かめなきゃ。じゃないとどっちみち、全てを失う。そう思ったから行ったんじゃないかなと。この辺は解釈別れそうですけどね。

 

 

私はどちらかというと、そういうタブーなことに不寛容なほうだと思う。だから最初朝子の行動を見たときは受け入れられなかったし、めちゃめちゃムカついた。でも、それだけじゃないんだなと。

 

良いとか、悪いとか、それだけじゃないこともあるんだって思った。

 

 

朝子は苦手だけど、正直羨ましくもある。"今この瞬間"を 自分の感情のままに生きることにまっすぐすぎて。それで他人を傷つけてもいるんだけど、なかなかこういう生き方はできない。自分に嘘をつかない生き方というのは案外難しい。

 

 

 

 

 

そういうわけで、今までの私の中のチンケな価値観とか倫理観がビリビリに破られて、新たな価値観を生んでくれた映画『寝ても覚めても』でした。(笑)

 

 

正直、もっと書きたいこといっぱいある、っていうか無限に書けそうなんだけど…この辺にしておきます。

 

 

 

あ、そうそう最後に。一緒に観た人に言われてたしかにと思ったんだけど。さっき朝子が幽霊みたいに見える時があったって書いたけど、この映画"死"を身近に感じさせる場面がすごく多い。それはなんでだろうって考えたんだけど、自分ではよく分からなかった。朝子がいつも、死んでもいいくらいの勢いで、死と生の渕ギリギリのとこで生きてるからそう感じたのかなあ?

 

 

こういう風に、考えだしたら止まらなくなるような魅力が多い映画だと思います。(笑)

私は3日前に観たんだけど、ずっとこの映画のことを考えてます。本当に面白かった。そして、色々なことを考えさせてくれる。とても思い出深い映画になりました。できるならまた観たい。

 

おすすめです!